ジェンダーニュートラルはマーケティングをどう変えたのか、 そして「フェムテック」の用語に進化は必要か?

世界的に毎年6月は「プライド月間」として、LGBTQ+の権利や文化について啓発する活動やイベントが行われます。fermata Singaporeでもジェンダーニュートラルなフェムテック製品を取り扱っています。

 

fermata Singaporeが拠点をおくシンガポールでは、残念ながら「ジェンダーニュートラル」はまだまだ語られることが少ないトピックです。しかし、自分自身で調べてみたり、友人や家族と話し合ってみることは個人でもできます。「ジェンダーニュートラルに関心はあるが、何から始めていいかわからない」という方は、ぜひこの記事を読んでみることから始めてください。

 

本記事の内容は、あくまでfermataチームメンバーの一人の個人的な考えにすぎませんが―私たちは生まれた瞬間から、すでに人生の輪郭が描かれています。それは往々として、親の考えや信念に基づいており、さらに親自身も自分たちの親世代から受け継いでいることが多いものです。

 

しかし大人になるにつれ、自分の人生のアウトラインは経験に基づいて変わっていきます。読んだ本や会話、ニュースや情報、尊敬する人、好きな人、嫌いな人など、影響を与えるものを数えるときりがありません。

 

ここで重要なのは「私たちは生まれながらにしてオリジナルではない」ということです。私たちは生まれた瞬間に、持って生まれた身体器官で男性か女性かを決められ、その二元論に基づく社会構造にあてはめられてしまっているのです。

 

  • ペニス → 男の子 → 男 = 青(男性的なイメージ)
  • ヴァギナ → 女の子 → 女性 = ピンク(女性的なイメージ)

Source: Let Toys Be Toys

しかし、いま社会がジェンダーフルイド(性の流動性:自分は男だ/女だとはっきりと自身のジェンダーを定義せず、その時々で性別を行き来する考え方)への認識を深めるにつれ、企業やブランドは性別に関係なく自社のサービスや商品を手に取ってもらえるよう意識的に努力しています。

 

ジェンダーニュートラルとは何か?

 

そもそもジェンダーニュートラルとは、伝統的な男女の性差や役割認識にとらわれない考え方のことです。具体的に、英語圏では使用する人称代名詞を男女を二分する"he/him/his/she/her/hers "から、 "they/them/theirs "へと移行しようとする動きもあります。

また、色についてもジェンダーニュートラルな視点では、特定のジェンダーを意味する色として従来使われてきた青やピンクではなく、ベージュやグレー、黒、白、緑、黄色といったインクルーシブな色が注目されています。

こうした動きにより、私たちのアイデンティティが色や代名詞によって単純に定義されることは取り払われつつあります。

 

それはなぜ大切なのか?

 

なぜなら、私たち生まれながらの「性別による期待」から解放、自分自身を制限なく、自由に表現できるようになるからです。    

この自由こそ、私たちみんなが望むことではないでしょうか?

もし、あなたがよりジェンダーニュートラルに関心があれば、ぜひリサーチし、わからなければ質問し、失敗を恐れず行動することを強くお勧めします。ジェンダーニュートラルな視点は学んで身につけるものです。記事末尾にいくつかのリンクを掲載しているので、参考にしてみてください。

 

ジェンダーニュートラルはマーケティングをどう変えたのか?

 

インターネットには、ビクトリア時代(1840年代〜1870年代初め頃)以降の広告やマーケティングに関する記録が残っています。なかでもジェンダーとマーケティングについて考察するときに最も典型的なのは、いわゆる「近代的な専業主婦」黄金時代ともいえる1940年代から1960年代でしょう。

 

この時代において女性は 、「夫を幸せにする」ための日用品やおいしい冷凍食品、美容関連の製品の広告のターゲットとされていました。一方男性に対しては、ビールやスーツ、カミソリ、高級車などのマーケティング訴求が多くありました。

 

90年代初頭には、女性向けの商品やサービスが男性用のものより割高となっている現状が「ピンク・タックス」として問題提起されたり、「メトロセクシャル・メン」と呼ばれる、従来の性的規範にとらわれない男性たちが台頭するなど、ジェンダーにまつわるムーブメントが起き始めました。しかし”未来的”と言われた2000年代に入っても、依然として男性向けと女性向けの商品が異なる形で販売されおり、従来の男女二元論的なマーケティングは根強いものでした。

 

ただここ数年で、私たちは「パワーシフト」とも言える大きな変化を目の当たりにしています。企業のマーケティング担当が消費者の声にきちんと耳を傾けるようになり、ジェンダーにとらわれないブランディングやマーケティングが登場するようになったのです。

 

実際にZ世代の48%は、男性向け/女性向けで製品を分類しないブランドに価値を見出すと答えています。

出典True Gen: Generation Z and its implications for companies: McKinsey & Company (2018)

 

Z世代は現在世界の人口の30%以上を占める大きな存在となっており、消費力を握っている世代です。つまり、ジェンダーニュートラルな製品を前向きに検討している企業やブランドは、多くの消費者の支持を得られるだけでなく、パッケージや広告を男女にわける必要がないため費用や材料を節約でき、コストパフォーマンスの観点でもメリットを得られる、まさにWin-Winな構造です。

 

さらに、その企業のミッションや目的が、ノンバイナリー(自分の性認識が男女のどちらにもはっきりと当てはまらないという考え)のコミュニティをサポートすることと関連していれば、より企業やブランドのファンが増えるでしょう。

 

フェムテック業界は進化する必要があるのか?

 

では女性のための技術ともいわれる「フェムテック」について、ジェンダーニュートラルの視点で捉えてみるとどうでしょうか?

 

「フェムテック」という言葉は、大多数が男性である投資家に理解してもらいやすいように生まれたものです。フェムテックがカバーする領域は、従来のヘルスケア産業で見過ごされてきた女性の健康とウェルネスのニーズに応える未開拓の市場であり、まずそのニーズを理解してもらうことが必要でした。

 

いつの日か「女性の」という言葉がなくなり、フェムテックが一般的なヘルスケアに分類されることを願っていますが、現時点でもジェンダーにとらわれないブランディングやマーケティングを重視するいくつかのフェムテック企業があります。

例えばカナダのAisle社は、環境に優しい生理用品を販売していますが、ターゲットは女性だけではありません。生物学的に生理のある人すべてが自身を「女性」と認識しているわけではないのですから。

 

同社は生理用品を女性のものとして分類する慣習に一石を投じています。これは、生理用品に関連するブランドが、同意なしに私たちの体のジェンダーを一方的に決めつけることから解放するために選んだ一つの方法とも言えます。

 

つまり、一般的に生理用品をさす "feminine hygiene(’女性の’ 衛生用品)"という言葉とはもうお別れ。これからは  "period positivity (生物学的に生理がある)"の時代です!

 

fermata Singaporeでは、生物学的に女性器を持つ人、ジェンダーニュートラルを自覚する人や、LGBTQ+コミュニティの一員である人にとって有益なテクノロジーや製品をサポートしています。

 

私たちのECプラットフォームで取り扱うべきジェンダーニュートラルな製品やブランドがあれば、ぜひ singapore@hellofermata.com までご連絡ください。

gender neutral femtech products

RESOURCES: 

 

Cover photo by Anna Shvets

 

日本語訳平理沙子

 

 

 

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